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    • 卒FIT買取サービスを支えるシステム(卒FITシステム)の作り方

    • 2020年7月2日
    • 卒FIT
    • 電力小売業界

1.卒FITシステムとは何か

当社はここ数年、電力小売業界向けのシステム構築に力を入れています。

電力小売業界向けでは

・電力CIS(顧客管理、契約管理、料金計算、WEBポータル等をセットにしたシステム)

が有名ですが、電力CISの導入はほぼ一巡しており最近では卒FITシステムの構築が増えています。

卒FITは「そつふぃっと」と読みます。

電力業界にあまり関わりがない方には馴染みのない言葉かと思います。

卒FIT=「FITの卒業」という意味なのですが、そもそもFITとは何でしょうか?

電気の買い取りにはFIT(固定価格買取制度)という制度があります。

太陽光や風力といった再生可能エネルギー(以下再エネ)の普及拡大を目的とした助成制度です。

FITは一定期間、再エネの発電者にとって有利な価格で電力会社が電気を買い取ってくれる制度です。
(ちなみに買い取りの財源は国民が負担します。電気料金の明細に載っている「再エネ発電賦課金」がそれです)

ところがこのFITは期限付きであるため、永遠に定額で買い取ってくれるわけではなく、期限が来れば失効してしまいます。

2019年から一部FITの期限が切れ始めており、FIT切れの電力はそのまま放置すると格安で電力会社に買い取られてしまいます。

そうなると少しでも高く買ってくれる電力会社に売りたくなるのが人情ですよね。

電力小売業各社もこのニーズに応えるため電力買い取りのための仕組み(卒FIT電源買い取りサービス)を提供し始めました。

卒FIT電源買い取りサービスの運用の根幹を担うのが、今回のテーマである「卒FITシステム」となります。

2.卒FITシステムの要件

次に卒FITシステムが備えるべき機能要件を見ていきましょう。

卒FITシステムは簡単に言えば電力の買い取りを行うシステムですので、ちょうど電力を売るためのシステムである電力CISの逆の動きをします。

しかし契約管理や計算処理等似ている部分も多いです。

つまり「電気を買う」と「電気を売る」の部分が異なりますが、他の部分(契約管理や計算処理等)は電力CISと非常によく似ているのです。

このため電力CISに慣れているシステムベンダーが卒FITシステムを手掛けることが多く、その方が開発関連のトラブルも少ないです。

では卒FITシステムの要件をざっと見ていきましょう。

最低限、以下のような機能があれば卒FITシステムとして成立します。

  • 顧客管理
  • 買取契約管理(登録、変更)
  • 契約会社切り替え(スイッチング)
  • 買取金額計算
  • 口座管理(買取料金の振込先口座) ※
  • 振込管理 ※

※ポイントや商品交換のみで完結する場合は不要ですが、ポイント管理等が別途必須機能となります。

さらに以下の機能があるとサービス運用のコストを大きく減らすことが出来ます。

  • 発電量自動取得
  • WEBポータル

「発電量自動取得」機能についてもう少し詳しく説明します。

そもそも電力買取料金を計算するためには、その月の発電量を知る必要があります。

発電量は一般送配電事業者(東京電力パワーグリッド等)が提供している「託送システム」から取得できます。

「発電量自動取得」機能とは「託送システム」から発電量データを自動で取得してくれる機能です。

この機能は必須というわけではないですが、これが無いと発電量データを手動で取得する必要があり、非常に手間がかかってしまいます。
(単に手間がかかるだけでなく、決して面白い作業ではないため、現場のストレスが高まります)

そのため「発電量自動取得」機能は少人数で卒FITサービスの運用を回すような場合には必須機能に近いです。
(無いと現場が疲弊してしまう)

「WEBポータル」も必須機能ではないのですが、買取電力量や買取金額、振込日等をWEBで通知できた方が問い合わせへの回答や紙の明細を発行・送付するコストを省けるため、作るメリットが大きいです。
(「いつ振り込まれるのか」といった問い合わせでカスタマーセンターがパンクしてしまうような事例もあるため、このあたりの省力化は重要です)

もともと卒FIT買取サービス自体がそこまで利幅の厚いビジネスではないため、自動化やペーパーレスによりオペレーションを簡素化することがとても重要です。

オペレーション簡素化の一環として「発電量自動取得」機能や、「WEBポータル」は重要な意味を持ちます。

次に必須かつ重要な機能である「買取金額計算」を見ていきましょう。

卒FITの「買取金額計算」は、電力小売の料金計算に比べて基本料金や段階料金等が無いため簡素ですが、いくつか注意点があります。

ひとつが振り込みタイミングをどうするかという点です。

卒FIT買取の場合、あくまで余剰電力の買い取りが中心になるため金額は小さく、振込手数料の負担を考慮すると毎月振り込むような状態には中々なりません。

そのため買取金額が一定の金額(5,000円とか1万円が多いです)になるまでシステムで残高管理しておき、一定金額を超えると振り込むフローが一般的です。

このあたりも細かいところではありますが、「一定の金額」を固定ではなく設定化しておくことで、将来の約款変更等に柔軟に追随できるシステムにしておくことが大切です。

システムが柔軟だと事業展開がフレキシブルになり、他社に対する臨機応変な差別化が可能になるからです。

もう一点が買い取りの対価をどうするかという点です。

単に現金による買い取りではなく商品と交換するとか、ポイントで買い取るといったサービスも存在します。

電力小売業各社が囲い込みのために、あの手この手で工夫しており、ポイントによる買い取りもその一環です。

ポイントであれば、ほぼ現金と同じ様に使える上、振込手数料がかからないのでユーザー側にも運営側にもメリットがあります。

たとえばまちエネの卒FIT買取サービスでは余った電力をPontaポイントで買い取ってくれます。

https://landing.machi-ene.jp/plan/detail/fit.html

ただしポイントで買い取りしたい場合は、卒FITシステムにもポイント計算やポイント付与を行う機能を追加する必要があります。

その他では「お預かりプラン」というユニークな取り組みがあります。

これは余剰電力を買い取らずに預かった形にして、翌月以降に繰り越せるというものです。

電力の小売価格よりも買取価格の方が安いので、余った場合に翌月以降に繰り越して翌月の電気使用量と相殺できた方がユーザーにとってはメリットが大きいです。

ちなみに「お預かりプラン」を実現するためには買取契約とは別に小売契約も締結する必要があるため、運営サイドにとっては小売契約のユーザーを増やすことができ、一石二鳥の施策と言えるでしょう。

3.まとめ

今後電力小売業界では、競争が激化し参入企業の淘汰が始まると言われています。

実際、参入したものの解散や破綻する企業がちらほらと出始めています。

こうした状況下、電力小売業各社は自社の独自性を出すために新たなサービスを次々と打ち出していく必要に迫られています。

卒FIT電力買取サービスもその内のひとつです。

こうした新サービスを支えるためのIT需要も今後高い状態が続いていくと思います。

最後に当社の宣伝となります。

  • 当社は電力小売業界専門のシステム会社として、
  • 電力小売業界様のIT需要を充足できるよう、
  • 電力小売業の業務知識を備えたエンジニアの教育・輩出に

引き続き励んでまいります。

当社は直近1年だけでも電力小売業界様向けのシステムを数億円レベルで納入した実績があり、15名以上の電力小売業務に通じたITエンジニアを擁しております。

電力小売関連のシステムで何かお悩み事やシステムで差別化したいといったご要望がある場合はお気軽に以下よりご連絡ください。

株式会社ソリューションウェアお問い合わせページ

https://solutionware.jp/contact.html

この記事を書いた人 : 佐藤冬彦

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